休職と復職を繰り返す社員への対応方法とは?問題社員への適切な対処と解雇の注意点を解説!

近年、メンタルヘルス不調などを理由に、休職と復職を繰り返す社員への対応に苦慮している企業が増えています。企業としては、社員の健康に配慮しつつ、組織運営への影響も最小限に抑えなければならず、難しい判断を迫られることになります。
本記事では、休職・復職を繰り返す社員への対応について、企業がとるべき法的措置と実務上の注意点を解説します。
1 休職・復職を繰り返す社員は
解雇できますか?
よくある質問ですが、結論から言うと、休職・復職を繰り返すこと自体を理由に直ちに解雇することはできません。
しかし、休職の原因となった傷病が治癒せず、就業規則に定める休職期間が満了してもなお復職できない場合、あるいは、復職後に短期間で再び休職を繰り返すような場合には、解雇が有効となる可能性があります。
ただし、解雇が有効となるには、「客観的に合理的な理由」があり、「社会通念上相当」と認められる必要があります(労働契約法16条)。具体的には、以下の要素などを総合的に考慮して判断されます。
- 休職の原因となった傷病の程度・回復の見込み業務に耐えうる状態に回復する見込みがあるか。
- 休職期間の長さ就業規則に定める休職期間の上限を超えているか。
- 休職・復職の回数頻繁に繰り返しているか。
- 業務への支障の程度他の社員への負担が増大しているか。
- 企業の対応復職支援プログラムの実施など、企業として十分な配慮を行ったか。
- 配置転換の可能性他の部署であれば就業可能か。
2 休職・復職を繰り返す問題社員の影響
休職・復職を繰り返す問題社員は、企業に以下のような影響を与える可能性があります。
- 生産性の低下担当業務が滞り、他の社員の負担が増加することで、企業全体の生産性が低下します。
- 職場環境の悪化周囲の社員に不公平感や不満が生じ、職場の士気が低下する可能性があります。
- 人事労務管理の負担増休職・復職の手続き、代替要員の確保、関係部署との調整など、人事労務担当者の負担が増加します。
- コストの増加休職中の社会保険料の企業負担分、代替要員の人件費など、コストが増加します。
3 復職ないし復職不許可の際の注意点
社員が復職を希望する場合であったとしても、企業は慎重に復職の可否を判断する必要があります。
- 医師の診断書の確認主治医の診断書だけでなく、産業医の意見も聴取し、復職が可能かどうかを判断します。主治医は「病気が治った」と診断しても、産業医は「業務に耐えうる状態ではない」と判断することもあります。
- 試し出勤(リハビリ勤務)の検討いきなり通常勤務に戻すのではなく、短時間勤務や軽作業から始める方法です。
- 復職不許可の場合復職を認めない場合、その理由を社員に明確に説明する必要があります。不当な復職拒否は、後に訴訟に発展するリスクがあります。
4 休職・復職を繰り返す問題社員の
発生を防ぐ方法
問題社員の発生を未然に防ぐためには、以下の対策が考えられます。
- メンタルヘルス対策の充実ストレスチェックの実施、相談窓口の設置、メンタルヘルス研修の実施など、社員の心の健康を守るための対策を講じることが重要です。
- 適切な労働時間管理長時間労働や過重労働は、メンタルヘルス不調の大きな原因となります。適切な労働時間管理を行うことは社員の心身の負担を軽減のみならず、企業のコンプライアンス遵守の姿勢及び社会的な信用につながります。
- ハラスメント対策パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントは、社員の心を深く傷つけ、休職の原因となることがあります。ハラスメント研修などを通じて、ハラスメントの発生防止を徹底することは非常に重要です。
- 就業規則の整備休職・復職に関するルールを明確化し、就業規則に明記しておくことで、社員にとってもどのような場合に休職・復職となるのかについて予見が可能になり、トラブルを未然に防ぐことができます。
5 復職後の配慮の必要性
社員が復職した後も、企業は継続的なフォローアップを行う必要があります。
- 定期的な面談定期的に面談を実施し、体調や業務状況を確認することが重要です。
- 産業医面談必要に応じて、産業医面談を実施し、専門的な立場からアドバイスを受ける必要があります。
- 業務内容の調整体調や能力に応じて、業務内容や業務量を調整することが必要です。
- 周囲の社員への理解促進復職した社員がスムーズに職場に復帰できるよう、周囲の社員への理解を促し、復職した社員の孤独感を解消することも重要です。
6 休職・復職を繰り返す問題社員の
解雇に関する裁判例の傾向
休職・復職を繰り返す社員の解雇に関する裁判例は多数存在します。
解雇の有効性は、個別具体的な事情を踏まえ判断されますが、一般的には、企業が十分な配慮を行ったにもかかわらず、社員が業務に耐えうる状態に回復せず、就業継続が困難であると判断される場合に初めて、解雇が有効と認められる傾向にあります。
そのため、安易に解雇に踏み切ることは、極めてリスクが大きいということに留意する必要があります。
7 弁護士による問題社員対応
休職・復職を繰り返す問題社員への対応は、法的な知識だけでなく、医学的な知識や労務管理の知識も必要となるため、非常に難しい問題です。企業が単独で対応するのではなく、弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。
- 法的なリスクの軽減解雇や退職勧奨など、法的なリスクを伴う対応について、適切なアドバイスを行うことができます。
- 適切な対応策の提案個別のケースに応じて、問題社員へどのような対応を行うことが最適か、臨機応変に提案することができます。
- 紛争解決のサポート社員との間でトラブルが顕在化してしまった場合、交渉や訴訟の代理人となることができます。
問題社員への対応にお悩みの企業は、ぜひ一度弊所にご相談ください。
8 まとめ
休職・復職を繰り返す問題社員への対応は、企業にとって非常にデリケートな問題です。社員の健康に配慮しつつ、組織運営への影響も最小限に抑えるためには、専門家(弁護士、産業医など)と連携し、適切な対応をとることが不可欠です。
本記事が、問題社員への対応に苦慮されている企業の皆様の一助となれば幸いです。