協調性のない社員は解雇できるか?
~弁護士によるモンスター社員対応~

職場における「協調性のない社員」の存在は、周囲の士気を下げ、チーム全体の生産性を大きく損ないます。
小さな不協和音が、やがて優秀な人材の離職や業績悪化につながり、最終的には企業ブランドそのものを揺るがす事態へと発展しかねません。
「このまま放置して良いのだろうか」――経営者や管理職の方にとって、決して看過できない課題といえるでしょう。

1 はじめに

あなたの会社に、以下のような社員はいませんか?

  • チームの和を根本から破壊する言動を繰り返し、周囲の社員を精神的に疲弊させる。
  • 自らの意見が絶対だと信じ込み、人の話に耳を貸さない。
  • 何度注意しても、業務の基本である「報告・連絡・相談」を無視し、重大なミスを隠蔽する。
  • 他の社員の懸命な努力を「無駄なこと」と断じて、非協力的な態度を貫き通す。
  • 能力不足を指摘されると逆上し、自身の未熟さを棚に上げて、指導者を「パワハラだ」と糾弾する。

このような社員の存在が、真面目に働く社員たちの貴重なモチベーションを奪い、職場の空気を澱ませ、チーム全体の生産性を著しく低下させている。「なんとかしたいが、下手に強く出れば『パワハラだ』と騒ぎ立てられるかもしれない」「かといって、このまま放置すると余計に問題が深刻化していく」
出口の見えない「モンスター社員」問題に、孤独な戦いを強いられ、頭を抱えてはいませんか?

2 協調性のない社員を放置することの
危険性とは

その問題社員を、このまま放置し続けると、あなたの会社はどうなってしまうでしょうか?
最初は、職場の雰囲気が少し悪くなる、コミュニケーションが滞るといった、些細な問題に見えるかもしれません。しかし、その「小さな歪み」は、やがて以下に述べるように会社の土台を揺るがす大きな亀裂へと発展していきます。


第一段階:優秀な社員の離職ドミノ

最も深刻なダメージは、最も真面目で、最も優秀な社員から静かに始まります。彼らは、理不尽な状況に強いストレスを感じています。
「なぜ、あの問題行動が許されて、私たちが一方的に我慢を強いられなければならないのか」「経営陣は見て見ぬふりをしているのか」
このような会社への不信感と、自身の正当な評価がされないことへの絶望感から、より良い環境を求めて、静かに、しかし着実に会社を去っていくのです。一人、また一人と主力メンバーを失うたびに、残された社員の負担は増大し、負の連鎖は加速します。


第二段階:業績悪化と社内モラルの崩壊

キーパーソンを失った組織のパフォーマンスは、当然ながら低下します。チームワークは崩壊し、これまで築き上げてきたノウハウは失われ、業績は目に見えて悪化の一途をたどるでしょう。さらに、「真面目にやるだけ損だ」という空気が蔓延し、社内全体のモラルの崩壊、遅刻や無断欠勤の増加、規律の乱れが常態化する危険性さえあります。


第三段階:企業ブランドの失墜と採用困難

離職した社員からのネガティブな口コミは、インターネットを通じて瞬く間に拡散します。会社の評判は地に落ち、「あの会社は問題社員を放置するブラック企業だ」というレッテルを貼られ、新たな人材の採用も極めて困難になるでしょう。
また、しびれを切らして解雇に性急に踏み切るのは、さらに危険な賭けです。日本の労働契約法は、労働者の地位を厚く保護しています。十分な証拠と適切な手順を踏まない安易な解雇は、不当解雇として労働審判や訴訟に発展する可能性が非常に高いです。結果として、会社側が敗訴すれば、数百万円、場合によっては数千万円もの解決金や賠償金の支払いを命じられるリスクが現実のものとなります。

3 協調性のない社員から会社を守る
法的戦略

協調性のない問題社員への対応は、感情的に行うものではありません。
「正しい手順」と「客観的な証拠」に基づいた戦略が存在します。
その具体的かつ効果的な戦略を以下においてステップごとに解説します。


STEP1
すべての指導を「動かぬ証拠」に変える

すべての基本にして、最も重要なステップです。口頭での注意は、法廷の場では「言った・言わない」の水掛け論となり、残念ながら証拠としての価値はほとんど認められません。法的手続きの絶対的な第一歩は、指導や警告を「書面」という客観的な証拠として記録に残すことです。

※なぜ「書面」でなければならないのか?

書面は、「いつ」「誰が」「どのような問題行動に対し」「具体的にどう改善してほしいのか」を明確に固定化します。これにより、会社として真摯に改善の機会を与えたという事実を、誰の目にも明らかな形で証明することが可能になります。

※「指導書」「注意書」「警告書」の戦略的使い分け

問題のレベルに応じて、以下の通り書面のトーンを段階的に引き上げていくことが有効です。

  1. 業務指導書(改善指導書)

    初期の段階で用います。「〇〇というあなたの行動は、就業規則第〇条に反する可能性があるため、今後は〇〇するように改善してください」といった形で、あくまで教育的な指導として改善を促します。

  2. 注意書

    指導書による指導後も改善が見られない場合に交付します。「再三の指導にもかかわらず、改善が見られないことは遺憾です。〇月〇日までに改善されない場合、より重い処分を検討せざるを得ません」と、少し踏み込んだ表現で反省を促します。

  3. 警告書

    最終通告に位置づけられる書面です。「度重なる指導・注意にも応じず、会社の秩序を著しく乱すあなたの行為は、懲戒処分の対象となり得ます。本書面をもって最終警告とします」と、会社の毅然とした態度を示します。

また、上記の書面を出す場合には、それぞれ以下の項目を記載することを心掛けましょう。

  1. 交付年月日・宛名(社員名)・差出人(会社名・代表者名)
  2. 問題となった具体的な行動(日時、場所、内容を明確に)
  3. その行動が就業規則のどの条項に違反するのか
  4. 求める具体的な改善行動
  5. 改善の履行期限
  6. 期限までに改善が見られない場合に、次の措置(懲戒処分など)を検討する旨

STEP2
「やるべきことは全てやった」という
客観的事実を築く

指導・警告を繰り返してもなお改善が見られない場合、次のステップは「解雇を回避するために、会社としてこれだけの努力を尽くした」という客観的な事実を積み上げることです。これが、最終的な判断を下す際の「正当性」を強力に裏付けます。日本の法律(労働契約法第16条)では、解雇が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は、権利の濫用として無効になると定められています。この「解雇権濫用法理」の壁を越えるために、解雇回避努力は不可欠なのです。

  • 配置転換や職務変更の検討
    「現在の部署や職務が、本人の適性に合っていないのかもしれない」という観点から、配置転換を検討します。本人の能力やスキル、経歴を考慮し、他の部署で再起のチャンスを与えることは、非常に有効な解雇回避努力と評価されます。ただし、明らかに不利益な左遷や、本人のキャリアを無視した嫌がらせと受け取られかねない異動は、逆に訴訟リスクを高めるため、慎重な検討が必要です。
  • 研修の実施
    ビジネスマナー研修、コミュニケーションスキル研修、あるいは業務に必要な専門知識を補うための研修など、本人の問題点に応じて、改善を目的とした教育機会を提供します。研修の受講を命じ、その結果を記録しておくことも、会社の努力を示す重要な証拠となります。
    これらの解雇回避努力のプロセスは、すべて書面(配置転換の辞令、面談記録、研修報告書など)で記録し、保管してください。「会社は一方的に切り捨てようとしたのではなく、最後まで手を差し伸べた」というストーリーを、客観的な証拠で構築することが重要です。

STEP3
最終手段としての「退職」を法的に実現する

これらの手順を丁寧かつ誠実に踏んでもなお、本人に全く改善の意思が見られず、業務への支障や他の社員への悪影響が明白である場合、初めて「退職勧奨」や「普通解雇」といった最終手段が、法的に有効な選択肢として現実味を帯びてきます。

  • 退職勧奨(合意退職の交渉)
    退職勧奨とは、会社から労働者に対して「合意の上で労働契約を終了しませんか?」と退職を促す行為です。あくまで「お願い」であり、強制ではありません。机を何度も叩く、大声で怒鳴る、何時間も拘束するといった行為は、違法な「退職強要」とみなされ、逆に損害賠償を請求される原因となります。
    場合によっては、退職金の上乗せなど、適切な解決条件を提示することで、相手の納得を引き出し、円満な合意退職を目指すことを検討することが必要です。
  • 普通解雇
    退職勧奨にも応じず、問題行動が継続する場合、最終的な選択肢として「普通解雇」に踏み切ります。この段階に至るまでに、【STEP1】と【STEP2】で積み上げた客観的な証拠が、その決定が「客観的に合理的」で「社会通念上相当」であること(労働契約法16条)を証明する生命線となります。
    なお、懲戒解雇は、不正行為など極めて悪質なケースに限定されることが多く、ハードルが非常に高いのが実情です。したがって、多くのケースでは、能力不足や協調性の欠如を理由とする「普通解雇」が、より現実的な法的手段となります。

4 悩んだ時には弁護士へ相談を

これらのステップは、法律の専門知識と個別のケースに応じた細心の注意を要します。一つ手順を間違えれば、それまでの努力が水泡に帰すだけでなく、会社が深刻なダメージを負うことになりかねません。
貴社に生じたトラブルに関して、我々弁護士はプロフェッショナルとして、以下のような業務を通じて解決までサポートをさせていただきます。

  1. 煩雑で精神的負担の大きい面談や書面作成の代行
  2. 法的な見通しに基づく的確な戦略立案
  3. 相手方との冷静な交渉代理
  4. 他の従業員に対する説明責任のサポート

経営者の皆様は、貴社に起きた法的な問題を専門家の手に委ね、本来の業務に集中し、会社の成長戦略を描くことに時間を使ってください。
私たちは、貴社の悩みに寄り添い、最後まで共に戦うパートナーです。健全な職場環境を取り戻し、すべての社員が安心して働ける会社を取り戻しましょう。

休職と復職を繰り返す社員への対応方法とは?
問題社員への適切な対処と解雇の注意点を解説!

近年、メンタルヘルス不調などを理由に、休職と復職を繰り返す社員への対応に苦慮している企業が増えています。企業としては、社員の健康に配慮しつつ、組織運営への影響も最小限に抑えなければならず、難しい判断を迫られることになります。
本記事では、休職・復職を繰り返す社員への対応について、企業がとるべき法的措置と実務上の注意点を解説します。

1 休職・復職を繰り返す社員は
解雇できますか?

よくある質問ですが、結論から言うと、休職・復職を繰り返すこと自体を理由に直ちに解雇することはできません。
しかし、休職の原因となった傷病が治癒せず、就業規則に定める休職期間が満了してもなお復職できない場合、あるいは、復職後に短期間で再び休職を繰り返すような場合には、解雇が有効となる可能性があります。
ただし、解雇が有効となるには、「客観的に合理的な理由」があり、「社会通念上相当」と認められる必要があります(労働契約法16条)。具体的には、以下の要素などを総合的に考慮して判断されます。

  • 休職の原因となった傷病の程度・回復の見込み業務に耐えうる状態に回復する見込みがあるか。
  • 休職期間の長さ就業規則に定める休職期間の上限を超えているか。
  • 休職・復職の回数頻繁に繰り返しているか。
  • 業務への支障の程度他の社員への負担が増大しているか。
  • 企業の対応復職支援プログラムの実施など、企業として十分な配慮を行ったか。
  • 配置転換の可能性他の部署であれば就業可能か。

2 休職・復職を繰り返す問題社員の影響

休職・復職を繰り返す問題社員は、企業に以下のような影響を与える可能性があります。

  • 生産性の低下担当業務が滞り、他の社員の負担が増加することで、企業全体の生産性が低下します。
  • 職場環境の悪化周囲の社員に不公平感や不満が生じ、職場の士気が低下する可能性があります。
  • 人事労務管理の負担増休職・復職の手続き、代替要員の確保、関係部署との調整など、人事労務担当者の負担が増加します。
  • コストの増加休職中の社会保険料の企業負担分、代替要員の人件費など、コストが増加します。

3 復職ないし復職不許可の際の注意点

社員が復職を希望する場合であったとしても、企業は慎重に復職の可否を判断する必要があります。

  • 医師の診断書の確認主治医の診断書だけでなく、産業医の意見も聴取し、復職が可能かどうかを判断します。主治医は「病気が治った」と診断しても、産業医は「業務に耐えうる状態ではない」と判断することもあります。
  • 試し出勤(リハビリ勤務)の検討いきなり通常勤務に戻すのではなく、短時間勤務や軽作業から始める方法です。
  • 復職不許可の場合復職を認めない場合、その理由を社員に明確に説明する必要があります。不当な復職拒否は、後に訴訟に発展するリスクがあります。

4 休職・復職を繰り返す問題社員の
発生を防ぐ方法

問題社員の発生を未然に防ぐためには、以下の対策が考えられます。

  • メンタルヘルス対策の充実ストレスチェックの実施、相談窓口の設置、メンタルヘルス研修の実施など、社員の心の健康を守るための対策を講じることが重要です。
  • 適切な労働時間管理長時間労働や過重労働は、メンタルヘルス不調の大きな原因となります。適切な労働時間管理を行うことは社員の心身の負担を軽減のみならず、企業のコンプライアンス遵守の姿勢及び社会的な信用につながります。
  • ハラスメント対策パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントは、社員の心を深く傷つけ、休職の原因となることがあります。ハラスメント研修などを通じて、ハラスメントの発生防止を徹底することは非常に重要です。
  • 就業規則の整備休職・復職に関するルールを明確化し、就業規則に明記しておくことで、社員にとってもどのような場合に休職・復職となるのかについて予見が可能になり、トラブルを未然に防ぐことができます。

5 復職後の配慮の必要性

社員が復職した後も、企業は継続的なフォローアップを行う必要があります。

  • 定期的な面談定期的に面談を実施し、体調や業務状況を確認することが重要です。
  • 産業医面談必要に応じて、産業医面談を実施し、専門的な立場からアドバイスを受ける必要があります。
  • 業務内容の調整体調や能力に応じて、業務内容や業務量を調整することが必要です。
  • 周囲の社員への理解促進復職した社員がスムーズに職場に復帰できるよう、周囲の社員への理解を促し、復職した社員の孤独感を解消することも重要です。

6 休職・復職を繰り返す問題社員の
解雇に関する裁判例の傾向

休職・復職を繰り返す社員の解雇に関する裁判例は多数存在します。
解雇の有効性は、個別具体的な事情を踏まえ判断されますが、一般的には、企業が十分な配慮を行ったにもかかわらず、社員が業務に耐えうる状態に回復せず、就業継続が困難であると判断される場合に初めて、解雇が有効と認められる傾向にあります。
そのため、安易に解雇に踏み切ることは、極めてリスクが大きいということに留意する必要があります。

7 弁護士による問題社員対応

休職・復職を繰り返す問題社員への対応は、法的な知識だけでなく、医学的な知識や労務管理の知識も必要となるため、非常に難しい問題です。企業が単独で対応するのではなく、弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。

  • 法的なリスクの軽減解雇や退職勧奨など、法的なリスクを伴う対応について、適切なアドバイスを行うことができます。
  • 適切な対応策の提案個別のケースに応じて、問題社員へどのような対応を行うことが最適か、臨機応変に提案することができます。
  • 紛争解決のサポート社員との間でトラブルが顕在化してしまった場合、交渉や訴訟の代理人となることができます。

問題社員への対応にお悩みの企業は、ぜひ一度弊所にご相談ください。

8 まとめ

休職・復職を繰り返す問題社員への対応は、企業にとって非常にデリケートな問題です。社員の健康に配慮しつつ、組織運営への影響も最小限に抑えるためには、専門家(弁護士、産業医など)と連携し、適切な対応をとることが不可欠です。
本記事が、問題社員への対応に苦慮されている企業の皆様の一助となれば幸いです。

問題社員を指導する方法・注意点について弁護士が分かりやすく解説!

職場における「問題社員」への対応は、経営者や人事担当者の大きな悩みの一つではないでしょうか。勤務態度が悪い、指示に従わない、遅刻や無断欠勤を繰り返すなど、職場秩序に悪影響を及ぼす社員への適切な対応は、企業の健全な運営にとって非常に重要です。
しかし、感情に任せた対応や、法律的に不適切な指導を行ってしまうと、逆に会社側が不利な立場に立たされることもあります。そこで今回は、弁護士の視点から、問題社員への指導方法や注意点について、わかりやすく解説します。

1 問題社員への指導とは?

「問題社員」とは、就業規則や職場のルールを守らなかったり、業務遂行に著しく問題があったりする社員を指します。ただし、単に上司や同僚と性格が合わない、やや不器用といった理由だけでは「問題社員」とは言えません。
指導の目的は、あくまで「改善」を促すことです。企業は、社員に対して指導や教育の機会を提供する義務があります。いきなり懲戒処分や解雇に踏み切るのではなく、まずは適切な手順を踏んで指導を行うことが重要です。

2 問題社員への具体的な指導方法とは?

指導は段階を踏んで行うのが基本です。一般的には、以下のような流れが考えられます。

  1. 口頭での注意
  2. 書面での注意・指導
  3. 面談記録の作成
  4. 懲戒処分(軽度→重度)
  5. 最終的に必要であれば解雇

いずれの段階でも、「記録を残す」ことが非常に重要です。後からトラブルになった際に、会社側が正当な対応をしたことを証明するための重要な証拠になります。

3 「口頭注意」の注意点について

軽微な問題行動については、まず口頭で注意することが一般的です。ただし、この段階でも「誰が」「いつ」「どのような内容で」注意をしたかを、メモなどで記録しておくことをおすすめします。
また、注意の際には感情的にならず、冷静に事実を伝えることが大切です。「あなたはダメだ」といった人格否定ではなく、「○日の会議に遅刻しました。今後は時間を守ってください」と具体的な事実と改善点を伝えましょう。

4 注意指導を書面で行う方法について

問題行動が改善されない場合は、書面での指導に移行します。書面による注意は、後に証拠として活用できる点で非常に有効です。注意文書には、以下のような内容を含めます。

  1. 行動の具体的内容(何が問題だったか)
  2. 会社のルールとの関係(就業規則違反等)
  3. 今後の期待・指導内容
  4. 再発時の対応方針(懲戒の可能性など)

本人に内容を説明し、可能であれば署名・捺印をもらいましょう。

5 問題社員対応は事前の準備がポイント

問題社員の対応は個別に判断する必要がありますが、対応の流れや記録の形式がバラバラだと、対応に一貫性がなくなり、会社の信用も損なわれかねません。そこで、社内で使用する「指導書式」や「対応マニュアル」をあらかじめ整備しておくことが有効です。

弁護士が監修した対応パッケージを導入することなどで、指導の精度が高まり、リスクを最小限に抑えることができます。

6 問題社員を指導しても
改善されない場合

注意や指導を繰り返しても改善が見られない場合、最終的には懲戒処分や解雇も選択肢となります。ただし、日本の労働法では「解雇は最後の手段」とされており、かなりハードルが高く、十分な指導・改善の機会を与えた上でなければ、解雇は無効とされる可能性があります。
特に「普通解雇」や「懲戒解雇」を行う際には、就業規則に定められた手続きを丁寧に踏む必要があり、慎重な判断が求められます。

7 弁護士による問題社員対応

問題社員対応には、法的な知識と豊富な実務経験が不可欠です。弁護士に相談することで、指導の流れや記録方法、適切な表現の仕方などについて専門的なアドバイスが受けられます。
また、状況に応じた懲戒手続きの進め方や、万が一トラブルになった場合の対応策についても、法的観点からバックアップが可能です。

8 まずは弁護士にご相談ください

問題社員への対応は、放置しても、強硬に出ても、会社にとってリスクとなることがあります。だからこそ、早い段階で専門家のアドバイスを受けることが重要です。仮に対応を間違うと、外部ユニオンから団体交渉を求められたりする場合などもあります。
当事務所では、企業の皆様の健全な労務管理を支援するため、問題社員対応のご相談を多数お受けしています。初回相談から具体的な対応プランのご提案まで、しっかりとサポートいたします。
「こんなことで相談してもいいのかな?」と思われることでも、ぜひ一度ご相談ください。あなたの会社のリスクを減らす第一歩になります。

「問題社員をすぐに辞めさせたい」は通用しない?

問題社員への対応は、職場秩序の維持と法的リスクの回避の両面から、慎重な検討が求められます。
本記事では、解雇の要件、手続き、判例を通じて、企業がとるべき適切な対応を解説します。

1 問題社員の解雇のハードルについて

企業内で問題行動を繰り返し、職場の秩序や他の社員に悪影響を及ぼす問題社員がいた場合、企業としては、その社員にすぐに辞めてもらいたいと考えるのが一般的です。

しかし、解雇は、客観的に合理的な理由があり、かつ社会通念上相当と認められなければ、権利濫用として無効とされてしまいます。もし解雇が無効と判断された場合、解雇時から復職時までの未払賃金(いわゆる「バックペイ」)の支払い義務が発生するなど、企業には多大な経済的負担が生じる可能性があります。

2 退職勧奨の検討について

問題社員を解雇した場合、本人が解雇の有効性に納得せず、争いに発展する可能性があります。万一、解雇が無効とされた場合には、前述のとおりバックペイなどの経済的負担が発生します。

そのため、問題社員に退職してもらいたいと考える際には、まずは自主的な退職を促す「退職勧奨」を検討するべきです。円満な合意退職を目指すことで、企業にとってもリスクを回避しやすくなります。ただし、退職勧奨の方法が社員の自由意思を侵害するような場合には、違法と判断されることもありますので注意が必要です。

3 問題社員を解雇するうえでの注意点

  • 就業規則や雇用契約書に定められた「解雇事由」に該当しているか確認する
  • 客観的に合理的な理由があるか、社会通念上相当と判断されるかを検討する
  • 解雇事由が重大かつ継続的で、改善の見込みがなく、他の手段がない場合に限り有効とされる
  • 懲戒解雇が妥当か不明な場合は、より軽い懲戒処分(戒告・減給など)も検討する

4 解雇の種類について

解雇は、企業が一方的に雇用契約を終了させる手続きですが、その種類には「普通解雇」と「懲戒解雇」があります。

  • 普通解雇:能力不足や協調性の欠如など、債務不履行を理由とした解雇
  • 懲戒解雇:重大な企業秩序違反に対する制裁としての解雇

懲戒解雇は、対象社員が被る不利益が大きいため、普通解雇よりも厳しく有効性が審査されます。
やむを得ず解雇する場合には、まずは普通解雇の検討が基本です。

5 解雇手続のポイント

  • 証拠の収集:メール、チャット、LINE、指導文書、録音データなどを確実に保存する
  • 弁明の機会の付与:対象社員に対して、具体的な行為を説明し意見を聞く
  • 解雇予告または予告手当:30日前の予告、または30日分以上の平均賃金を支払う

6 不当解雇と判断された事例

乙山商会事件
(大阪地裁平成25年6月21日)

石炭石油製品等の販売を目的とする会社に勤務する従業員が、会社に無断で業務関連情報 (取引に関する商品販売先の社名、担当者名、連絡先、交渉経過のメモ、受注数量、単価等の情報)を私物の記録媒体(ハードディスク)に保存をして、自宅に持ち帰りました。ハードディスクがなくなっていることに気付いた会社は、従業員が会社の機密情報が入ったハードディスクを自宅に持ち帰った行為が就業規則上の懲戒解雇事由に該当することを理由として、従業員を懲戒解雇しました。
判決では、ハードディスクに保存された情報が外部に流出したか否かは確認されておらず、ハードディスクの無断持ち帰りによって会社に何らかの具体的な損害が発生したと認められないことなどから、就業規則上の懲戒解雇事由に該当しないことを理由として、解雇が無効であると判断されました。


社会福祉法人蓬莱会事件
(東京高裁平成30年1月25日)

介護施設に勤務する介護職員が、すぐに否定的な意見を言い出し相手の話を聞かず話が前に進まない、引継ぎをする業務に困難が生じる、業務を正当な理由もなく一方的に断る、業務の追加・変更があるような場合に業務を拒否したり苦情を言い業務が円滑に稼働しないなどの問題行動を繰り返していました。
施設長は、職員を呼び出して指導をし、勤務態度を改めさせようとしましたが、職員は意に介しませんでした。そのため、施設長は、デイサービス部門への配置転換を打診しましたが(配置転換の勧告は業務命令として行われたものではありませんでした)、職員は配置転換に応じませんでした。そこで、最終的には解雇処分を下したという事例です。
高裁判決では、職員の問題行動を認定しつつも、職員を他の部署に配置転換したり他の上司の下で稼働させることを検討すべきであったにもかかわらず、施設長がデイサービス部門への配置転換を打診したにとどまり、これを超える解雇回避の措置を検討しなかったことなどを理由として、解雇が無効であると判断されました。

7 解雇が認められた事例

南淡漁業協同組合事件
(大阪高裁平成24年4月18日)

漁業協同組組合において信用業務(主に貯金業務)を担当していた職員が、職場で他の職員とほとんど言葉を交わさず、業務上必要な連絡もしないまま仕事を行うなど、必要なコミュニケーションをとらなくなりました。また、貯金名義人の承諾なしに貯金の振替をする、組合の指示に反して貯金払戻請求書を代筆する等の問題行動を独断で繰り返していました。
組合の代表者は職員に3回にわたって注意をしましたが、職員は勤務態度を改めようと全くしなかったため、勤務態度の改善が期待できないものと判断し、最終的には解雇処分を下したという事例です。
高裁判決では、職員の言動により様々な業務上の具体的な支障が生じており、代表者が3回にわたって注意をしたにもかかわらず職員が勤務態度を改めようと全くしなかったことなどを理由として、解雇が有効であると判断されました。


KDDI事件
(東京高裁平成30年11月8日)

従業員が、3年以上の期間にわたり、就業規則、賃金規定、社宅規程、単身赴任基準、国内旅費規程の要件に該当しないにもかかわらず、単身赴任手当等を受給したり、借上げ社宅に適正な賃料を負担しないで居住していました。
高裁判決では、従業員が積極的に虚偽の事実を申告して各種手当を不正に受給したり本来支払うべき債務の支払を不正に免れたりするなど、雇用関係を継続する前提となる信頼関係を回復困難なほどに毀損する背信行為を複数回にわたり行い、会社に400万円を超える損害を生じさせたこと、懲戒解雇がされるまで明確な謝罪や被害弁償を行うこともなかったことなどを理由として、解雇が有効であると判断されました。

8 弁護士によるサポート

問題社員への対応を怠れば、職場環境の悪化や企業の信用低下を招く恐れがあります。
一方で、対応を誤れば企業が法的責任を問われる可能性もあります。

弁護士法人たいようでは、企業の立場に立った問題社員対応を多数サポートしており、
退職勧奨から解雇手続まで、実務に即した対応策をご提案いたします。
問題社員対応にお困りの際は、ぜひご相談ください。

モンスター社員とは?問題社員対応について事例・裁判例を交えて弁護士が解説!

1 モンスター社員(問題社員)とは?

「モンスター社員」とは、企業内で問題行動を繰り返し、職場の秩序や他の社員に悪影響を及ぼす社員を指します。具体的には、業務命令に従わない、同僚や上司への暴言・暴力、ハラスメント行為、無断欠勤・遅刻の常習、組織を混乱させる行動をとるなど、職場環境や企業の運営に支障をきたす行為を行う社員です。

モンスター社員の存在は、企業の生産性や職場環境の悪化を招くだけでなく、法的なトラブルを引き起こすリスクも高まります。そのため、企業は早期に問題を認識し、適切な対応を講じることが求められます。

 

2 モンスター社員・問題社員の種類

モンスター社員(問題社員)には、様々な種類が存在します。

  • ハラスメント型:パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、モラルハラスメントなど、様々なハラスメント行為を行う従業員。
  • 怠慢・無責任型:業務を怠慢したり、責任を放棄したりする従業員。
  • 攻撃型:同僚や上司に対して攻撃的な言動を行う従業員。
  • 依存型:過度に会社や上司に依存し、自律的に業務を遂行できない従業員。
  • 自己中心的型:自己中心的で、周囲への配慮に欠ける従業員。
  • 経歴詐称・不正型:経歴詐称や不正行為を行う従業員。

 

3 モンスター社員を放置するリスク

モンスター社員(問題社員)を放置すると、以下のようなリスクが生じる可能性があります。

  • 企業イメージの悪化:モンスター社員の行動がSNS等で拡散されると、企業イメージが著しく悪化する可能性があります。
  • 訴訟リスク:ハラスメント行為や不当解雇など、モンスター社員に関連する訴訟リスクが高まります。
  • 他の従業員のモチベーション低下:モンスター社員の存在は、他の従業員のモチベーションを低下させ、離職率を高める可能性があります。
  • 業績悪化:モンスター社員の行動は、企業の業績に悪影響を与える可能性があります。

4 モンスター社員を
辞めさせることはできるのか?

モンスター社員(問題社員)を辞めさせることは、法的には可能ですが、慎重な対応が必要です。

1 退職勧奨

退職勧奨は、従業員に自主的な退職を促す方法です。退職勧奨を行う際は、強要にならないよう注意が必要です。


2 合意退職

会社と従業員が合意の上で退職する方法です。合意退職を行う際は、合意内容を書面に残しておくことが重要です。


3 解雇

解雇は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当である場合にのみ有効となります。
モンスター社員の行動が解雇理由に該当するかどうかは、個別のケースによって判断されます

 

5 ケース別のモンスター社員対応

モンスター社員(問題社員)への対応は、その種類や状況によって異なります。

1 ハラスメント型

事実確認を徹底し、就業規則に基づいた処分を行う必要があります。


2 怠慢・無責任型

業務改善を促し、改善が見られない場合は処分を検討する必要があります。


3 攻撃型

事実確認を徹底し、必要に応じて配置転換や就業規則に基づいた処分を検討する必要があります。


4 依存型

自律的な業務遂行を促し、必要に応じて専門家の支援を検討する必要があります。


5 自己中心的型

周囲への配慮を促し、改善が見られない場合は必要に応じて配置転換や就業規則に基づいた処分を検討する必要があります。


6 経歴詐称・不正型

事実確認を徹底し、懲戒解雇を含めた厳正な処分を行う必要があります。

 

6 モンスター社員対応について
弁護士に依頼する際の費用相場

弁護士に依頼する際の費用相場は、以下の通りです。

  • 相談料:30分5,000円~1万円程度
  • 交渉・代理業務:着手金20万円~50万円、成功報酬10%~20%

費用は事案の難易度や弁護士事務所によって異なります。事前に見積もりを確認することをお勧めします。

 

7 モンスター社員対応を
実施する際の注意点

  • 証拠を残す:業務命令違反やハラスメント行為の証拠を、メールやメモ、録音などで確保します。
  • 就業規則の整備:懲戒処分や解雇に関する規定を明確にし、社員に周知徹底しておきます。
  • 弁護士への相談:対応が難しい場合は、早期に専門家に相談することが重要です。

 

8 弁護士によるモンスター社員対応

弁護士は、モンスター社員対応において、以下のサポートを行います。

  • 法的アドバイス:企業が法令を遵守した対応を取れるよう支援。
  • 交渉や調停の代理:社員とのトラブル解決をサポート。
  • 解雇手続きの適切な実施:トラブルを未然に防ぐための支援。
  • 就業規則の見直し:モンスター社員対策として、就業規則の見直しをサポートします。

 

9 モンスター社員対応に関する
弁護士法人たいようの解決実績

弁護士法人たいようでは、過去に多くのモンスター社員対応を成功に導いています。
具体例として、パワハラ社員の早期退職の実現や、訴訟を回避した円満解決などがあります。

 

10 モンスター社員対応
(問題社員対応)については
弁護士にご相談ください

モンスター社員への対応は、企業のリスクマネジメントにおいて非常に重要です。
困難なケースでも、専門家のサポートがあれば適切な対応が可能です。
弁護士法人たいようでは、企業の状況に合わせた最適な解決策を提供いたしますので、ぜひご相談ください。